Slowing down fast fashion

画像元8/01/COURT/ドキュメンタリー映画"Slowing Down Fast Fashion" ジャパン 初上映会

 

The campaigne for wool主催のファストファッションを問題視するドキュメンタリー映画。イギリス製作。

 

 

実はファッション産業は、鉱業(mining)、工業的畜産(animal agriculture)に次いで三番目に汚染度の高い産業である。

 

現在の世界では、服は使い捨てのもの、1シーズンだけ着るという意識が大きい。

たいていの人々は自分の着てる服の素材が何なのか、どこの工場で作られているのか知らないし、工場に入ったこともない。

 

ファッション産業に限った話ではなく、食品産業でも言えることだが、服を作る人と着る人の距離が果てしなく離れてしまっている。

 

このような現状を作ったのが、化学繊維の発展と共に現れたファストファッションである。ファストファッションは大量生産及び大量販売によって異常な安さを実現している。

 

しかし、その支払額は必ずしも真のコストではない。

 

世界のどこかの人々、もしくは環境の犠牲の上に成り立っている価格なのである。

 

この事実を世界に知らしめた事件が、ラナプラザの悲劇である。

 

2013年4月24日、バングラデシュ人民共和国の街・サパールで起きた。その街にある商業ビル「ラナプラザ」は、突如崩壊し多くの犠牲者を生んだ。

ビルの倒壊で亡くなった方は1100名以上、負傷者は2500人以上、行方不明者は500名にものぼった。

ラナプラザには銀行、商店が入っていた他、多数の縫製工場が稼働していた。違法に階数が増設されたこのビルはミシンや発電機などの振動が原因と考えられる亀裂が、倒壊前日に確認され警告されていた。しかし、縫製工場の経営者は従業員をそのまま働かせ続けて遂にビルは倒壊してしまったという。

ラナプラザをはじめとするバングラデシュの縫製工場は、多くの有名ファッションメーカーが安い人件費を求めて製作を発注する。

 

このようにファストファッション発展途上国の強制労働や劣悪な労働環境の上に成り立っていた。

 

参照

ラナプラザの悲劇とエシカルファッション 第二の悲劇を生まないためにすべきこと | ELEMINIST(エレミニスト)

 

 

この映画でよかった点として、この問題はいくらでも暗く考えることができてしまうが、変えるためには前向きに明るく考える必要があると転換していたことだ。

 

では、なぜ人々はファストファッションにはまってしまうのか。

心理学者へのインタビューではRetail therapyという言葉が出てきた。

安い服を大量に買うことは一時的な所有欲を満たし、人々をハイにする、言わば中毒のようなものである。ショップから次々と売り出される新商品、周りの人が着ている新しい服、そして新しい服を着るとたいていの人は褒めてくれていい気分になるといった要素が全てが購買を中毒的なものにしている。

特に若い世代ははまりやすい。同じものいつまでも着ていることはuncoolという風潮、uncoolだと仲間はずれになってしまう不安~特に仲間はずれは若者には大きな問題である~、が若者に常に新品を追い求めさせる。

 

そのため、単にファストファッションを買わない、という選択は難しく、長持ちする丈夫な服や気に入った服を長く着ることがcoolであるといった意識改革がまず必要である。

 

日本ではエシカルファッションとして広まり、coolな印象はあると思われる。しかし、これは自分の考えに過ぎないが、謙遜文化の我々からすると、“いいものを適正価格で買ってそれを誇る“ことは少々難しいかもしれない。

 

この映画はThe campaigne for wool主催であるため、天然繊維woolはすばらしい、もっとwoolを着よう、というメッセージが前面に押し出されている。

 

天然繊維であればどれも素晴らしいのかと思っていたが実は綿花にはそれなりに問題があるらしい。

 

一つ目の問題として、綿花栽培には大量の水を必要とする。なんとジーンズ一本に1万ℓの水が必要らしい。

国連によって世界最大の環境破壊と認定されたアラル湖の砂漠化も綿花栽培の引水が原因とされている。

二つ目の問題として、綿花の成長にはもはや天然繊維とは言い難いほどの大量の殺虫剤散布が必要不可欠である。

 

これら綿花の闇は“Dirty white gold“という映画で取り上げられているので、ぜひ見てみたい。

 

我々消費者が、望まない発展途上国での搾取や環境破壊に加担しないためには、サプライチェーンすべてを透明化することが必要である。

 

 

それでは、woolに話をもどして、

woolのなにがすごいのか

 

この映画では驚くべき事例が紹介されている。

まず、woolは宇宙での生活着に使用されているらしい。宇宙では洗濯ができないし閉鎖空間であるため、今までは服は宇宙にポイ捨て状態であった。そして地上からも定期的に服を輸送する必要があった。

そこでより長持ちする新素材を検討したところ、繊維くずが出にくく、におわず長持ちすることからwoolが採用されたという。

 

また、wool&princeというメーカーでは、コットンシャツに似せた上質なwoolシャツを作り、なんと製作者自ら100日間洗わずに毎日着用する実験を行った。映画では街の人々が彼のシャツをかいだりする動画が紹介されたが、全く臭くないらしい。しかもシワシワでもなく、ノーアイロンで新品同様の美しさを保っていた。

これは登山用品などにも使えそうだと思った。

 

イギリスではfast fashionを問題視する活動が色々と行われている。

 

一つはzadyという団体だ。

彼らは“Fast fashion is fast food”というインパクトの強いメッセージを発信している。

 

また、服を裏返して着てタグを見せることでその服がどこで作られたのかに意識を向けるファッションレボリューションウィークなどのムーブメントもある。

 

その他にも編み物を若い世代に広めようとしているwool and the gangやstitched upが紹介された。