教育 × 破壊的イノベーション Clayton Christensen 著

要約

 

破壊的イノベーションとは「(既存企業の)現在の顧客が必要としていないイノベーション」のことで、この破壊的イノベーションが市場を獲得すると、顧客の声に耳を傾けて持続的イノベーションを絶えず行ってきた既存企業は全く価値のないものとして破産してしまう。

 

本書ではClayton Christensen 氏の研究する破壊的イノベーションが現代アメリカの教育現場にいかに必要であるか、いかにして既存教育を破壊するか、そして、どうすれば導入できるかが解説されている。

 

現代の学校教育では何が破壊的イノベーションとなり得るのか。

それは、生徒中心のコンピューター学習である。

現在の教室では概ね、生徒が学校の指定する主要科目を学校の指定した順序、方法で、同じように教師の話すことを板書し、同じ進度で学ぶように全てが計画されている。これはいわば学校中心の教育と言える。

 

一方で、生徒中心とはどういうことかと言うと

 

生徒は一人一人、異なる知能を持っており、得意とする学び方もそれぞれ異なる。

例えば、先生の授業を聞いて理解できる子もいれば、体を動かして覚えることができる子、映像を見て覚えることができる子、何か物を作って覚えることができる子という風に。

つまり、一人一人にあったやり方で勉強させる方法が生徒中心の教育である。

しかし、この生徒中心の教育では一人の先生で40人のそれぞれの学習方法の面倒を見ることはできない。少なくとも現行のシステムの延長上では。

そこで、近年のコンピューター技術がこの生徒中心の教育において活躍する。

多様なコンテンツがオンラインで利用可能な現代では、生徒は好きな時間に、自分のペースで学ぶことができ、先生は授業やテストを行うかわりに生徒のメンタリングをするようになる。

この生徒中心の教育は、既存教育の持続的イノベーション上では達成しえない、まったく異なる構造を持っており、既存教育にとっての破壊的イノベーションとなり得る。